オーディションでは何をするのか?

審査席の向こうで振付を教わる参加者たち。手前に審査する側が並んでいる|劇団カスタリア 2026年のオーディション
2026年のキャストオーディション。手前が審査する側

劇団カスタリアの演出家・大野真由美が、キャストオーディションで何を見て配役を決めているのかを書きました。大野真由美(演出・脚本)

入団のための試験ではありません

カスタリアに入団オーディションはありません。ここで説明しているのは、入団したあとに受けるキャストオーディション(配役を決めるためのもの)です。入団の条件や稽古のスケジュールは団員募集のページをご覧ください。

何を見て決めているのか

劇団カスタリアでは、キャストオーディションを毎公演行っています。
普段の基礎レッスンで団員たちの実力はある程度分かっていますが、キャストオーディションはあくまで「役に合っているかどうか」のためのものです。

なんとなく団員たちの顔を浮かべながら脚本を書いていたりするので、私もボヤっとしたイメージがある状態でオーディションに臨むのですが、そのイメージを覆すような団員達の「新しい顔」がオーディションでは見えるのです。
それは伸びしろであったり、新しい一面だったりその時によって違うのですが、その刺激を受けて作品のインスピレーションをもらえたりします。

オーディションに限らずよく勘違いしやすいのが、「技術的に上手いことが正義」と考えすぎてしまうこと。
もちろん、作品創りの上で一定の水準に達していることは必須ですが(特にミュージカルは出来なければいけないことが多くて大変です)、上手くやろうという気持ちが出すぎている表現は魅力的に見えません

たとえば、歌で歌詞を間違えたり出てこなかったり、ダンスの振りを間違えたとして、
案外、受けている本人がミスした!と思うことは、審査する側から見るとミスには見えません。
それよりも「ミスをした後をどうするか」のほうに着目していたりします。
その対応はそのまま舞台の本番の姿と同じだからです。
舞台は生もの。何が起きるか分からないからこそ、「舞台を任せられるか(信頼関係を築けるか)」が大切だと私は考えています。

稽古場で3人が腕を大きく広げて踊っているダンス審査の場面|劇団カスタリア 2026年のオーディション
ダンス審査。その場で振付を教わって、そのまま踊る

あとは熱量。これは本当に大事です。
内面から出てくるエネルギーは、観客を魅了します。
これが強い方は、自然と目がいく。
大げさにやるとかそういうことではなく、ただ立っているだけでもエネルギーが出る人は出ます
邪念も恥も外聞も捨てて、表現することに集中することで熱量は生まれるのだと思っています。

未経験でも役はつくのか

カスタリアのオーディションでは、セリフ審査でこちらから指定した役で読んでいただいた後、それぞれ希望の役で読んでもらう方式をとっています。
団員たちにとっては‘悔いがないように’、そして私達スタッフにとっても‘様々な可能性を取りこぼすことないように’という意図で行っているのですが、この方式がうまく作用した例があります。

「オーブ」という作品のオーディションで最後に希望の役で読んでもらった時に、一人の舞台未経験の団員がヒロイン役を希望しました。
その芝居が予想以上に役にはまっていて、ヒロイン役に抜擢したことがあります(残念ながら、諸事情により出演は叶わなかったのですが)。

「レッスンより一回の本番」と言われるぐらい、本番を踏むというのは大きな経験です。
でも、未経験だから可能性が0なわけではなく、その人自身の生い立ち、研究、センス、役との整合性…etc
様々なものが、何かのきっかけで輝く時があります。

私たち作り手側も、そういった原石を見逃さない目を養う必要がありますし、キャスティングした責任も担わなければならない。
役者側もキャスティングされた責任を負う必要がある。
同じゴールを目指すために、作品を一緒に創るパートナーとして努力するのは経験者も未経験者も変わりません。
キャスティングされることがゴールなのではなく、その向こう側もセットなことを忘れずに。

台本を手に、順番を待ちながら前を見ている出演者|劇団カスタリア 2026年のオーディション
セリフ審査を待つあいだ

希望の役でなかった人はどうなるのか

「自分がやりたい役」と「向いている役」が必ずしも同じとは限らない。
実は、これを受け入れられるかどうかが役者を続けるコツだと私は思っています。
自分のことは案外分からないもので、思ってもみない役がハマり役になったりします。

実際、観客として舞台を観ている時も、主軸の役ではなくても強烈に印象に残る方がいますし、自分がキャスト側の時もそういう方を何人も見ました。

舞台に立ちたい方のほとんどは、メインキャストをやりたいと願う方が多いと思いますが、「どんな役でも輝かせることが出来る」のが役者としての技量だ、と私は考えています。
そもそも台本に出てくる役に無駄な役は一つもなく、物語になくてはならない存在です。
そして、与えられた役を生かすも殺すも自分次第。
台詞が少ないからと嘆かないでください。台詞の量=役者の価値ではありません
少なくたっていくらでも輝けます!(むしろ台詞が少ないほうが難易度が上がります)
自分に与えられた役に自信を持って堂々と演じて欲しいですし、もしやりたい役があるとしたら、自分に足りないものは何なのかを客観的に分析して、必要なことを身につけていきましょう。(それは技術だけではないということを…こっそり付け加えておきます)

楽譜をめくりながら自分の出番を待つ出演者|劇団カスタリア 2026年のオーディション
歌唱審査の前。楽譜を手に出番を待つ

配役の結果はいつ、どうやって知らされるのか

キャストは、オーディションから1週間後を目途に発表しています。
その日の夜に大体決まっている場合もあれば、ギリギリまで悩む場合もあります。
ただ、後者の場合も全ての役が決まらないで悩むということはありません。
一つ二つは確定枠があって、それ以外の役でベストポジションを探ります。

また、オーディション結果を経て新たに役を作ることも多いので、その影響で配役発表までに時間をいただくこともあります。

ミュージカルはとにかく表現方法が多いので、ダンスが必要な役、歌が多い役、重要な芝居のシーンがある役など、それぞれの役の特性と役者の特性が合致するように考えながら決めていきます。
それから、これは劇団ならではですが、役者たちの「成長」を考えてキャスティングもしています。

そういった過程を経て配役が決まったら、稽古初日に直接団員たちに発表していくスタイルをとっています。
団員たちにとっては、この発表されるまでの一週間がソワソワドキドキな時間ですね。

審査席で手元の端末に目を落としながら話す演出家の大野真由美|劇団カスタリア 2026年のオーディション
審査席から。演出家の大野真由美

課題曲を誰がどう決めているのか

数年前は、課題曲を私のほうから指定して歌っていただいていましたが、ここ最近は自由曲にしています。
もちろんこれにも意図があって、自分の声や歌い方に合う曲を選んでいるか(自分を客観視出来ているか)、今表現したいものがどんなものなのか(PRしたい部分はどんなところなのか)というのを見るためでもあります。
(本当は、台本と曲がすべて揃っている状態でオーディションをするのが一番良いのですが…その点は深くお詫び申し上げます…)
劇団のオリジナル曲もかなり増えてきましたので、2027年からは劇団の曲を課題曲にしていきたいと思っています。

ダブルキャストの2組をどう組むのか

カスタリアの公演は劇場のサイズ的にダブルキャストになることが多く(一部シングルキャスト)、組み合わせについては慎重になるところですが、実はそこまで時間をかけていません。
時間をかけないで済むのは、劇団だからこそ、とも言えます。
団員一人一人をしっかり見ているからです。
ですが、やはり配役というのは大変重要なポイントですので、簡単に決めているわけではありません。

例えばAとBの役があったとして、この二人が友達の関係で、一緒にハモるMナンバーがあるとなった場合、団員のキャラクター、身長、声の質を考慮して組み合わせを決めていきます。(声は合うけど、ミザンスのバランス悪いかな?等)
AとBが決まったら、Aの母親役のCはAの見た目に合わせて考える…といったように、枝分かれで決めていきます。
実は、もう一つ興行的な話でも振り分けを考えたりしているのですが…これについては生々しい話になるので、割愛させていただきます笑)

途中参加者に役を作った話

実は、オーディションが終わった後に入団する方も少なくなく、入団タイミングがあまりにも公演日間近な場合は出演は難しいのですが、タイミングと入団される方の実力とやる気次第で出演することも可能です。

新たに役を作ることもありますが、作品への影響が大きいため、あまり大きな役を作るのは難しいのが現状です。
なるべくたくさんの方にチャンスを、という想いはありますが、全員で同じゴールを目指す仲間として、早い段階で参加していただきたいなと思っています。
オーディションは毎年3月または4月に行っています。
ぜひSNSなどの情報をチェックしてください。

稽古場のトラスの下でピースサインをして笑う参加者全員の集合写真|劇団カスタリア 2026年のオーディション
オーディションを終えて

関わり方は3つあります

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  • 入団

    キャストとして舞台に立ちます。入団オーディションはありません。約半年かけて稽古を重ね、本公演に出演します。

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    制作・衣裳・美術・広報など、舞台を支える側で関わることもできます。団費はかかりません。ボランティアスタッフとしてのご参加となります。ご希望の分野をお知らせください。

    裏方として関わる

この記事に出てくる公演

本文で触れている「オーブ」は2022年の第5回公演です。ダブルキャストの組み方は第9回公演「金曜日の食卓」など、各公演のページで実際の配役表をご覧いただけます。

受ける側から見たオーディション